本年度は実験計画の二年次にあたる。初年度においては、二液相分離を示す液体Bi-Ga合金の電気抵抗の測定を実施し、揺らぎの生成発達が平衡二液相分離開始温度より高温で既に見いだされること、過冷却状態では揺らぎの顕著な発達を反映して電気抵抗が急激に現象する事、過冷却の程度が臨界組成でゼロとなるのに対しその前後で大きくなるなどスピノ-ダル挙動を反映している事など、非常に興味深い結果を得ている。さらに、この二液相分離過程が非常に重力対流の影響を受けている可能性に着目し、文部省宇宙科学研究所の小型ロケットS520の無有力条件にて、電気抵抗測定実験を実施した。その結果、揺らぎの生成発達が平衡二液相分離開始温度より20度Kも高温で既に見いだされること、および過冷却の範囲が無重力で著しく拡がる事を見いだした。本年度はこれらの結果を踏まえて、液体Bi-Ga系の電気抵抗と原子容積を非常に広い温度範囲で測定した。その結果、電気抵抗および原子容積共に、533K以下の揺らぎが顕著な低温側液体域と563K以上の揺らぎの非常に少ない高温側液体域で挙動が異なる事が判明した。さらにこの533K以下の揺らぎが顕著な低温側液体と563K以上の非常に揺らぎが少ない高温側液体の間に遷移温度域がある事が判明した。実験的には、この様な特徴が二液相分離を示す液体合金共通に見られる現象であるかの確認を進めている。理論的には、現在、これらの結果の一層の解析を計る目的で計算機シュミレーションのプログラム開発を実施している。さらに、平成7年二月実施を目標に二回目のロケット実験プロジェクト("エルム"プロジェクト)を遂行中である。
|