研究概要 |
気相有機分子にレーザ光を照射し多光子過程を利用して新規な薄膜や微粒子などの固形生成物を直接気相分子から作成することを試みた。 1.アクリル酸メチル(MA)を石英の照射窓をもつセルに導入しレーザ光(337nm)を照射したところ、石英窓に重合性の薄膜を短時間(30分程度)で形成することができた。薄膜の収量はMAの試料圧が高い程大きく、照射時間に対してほぼ比例して増加した。また、薄膜の収量はレーザ光強度の二乗に比例し、薄膜形成には二光子が関与していることが判明した。 2.次に、気相のMA(40Torr)にアクロレイン(AC)を30-80Torr混合しレーザ光(337nm)を1.5時間照射したところ,レーザ光の照射面に白色の重合性化合物が膜状に生成すると同時に、粒状の沈澱物がセルの下部に沈積した。ACのみにレーザ光を照射すると粒状の生成物のみが沈積し、水銀灯で照射した場合(薄膜形成)と異なった形状を示していた。レーザ光照射による微粒子形成反応ではACにMAを混合した試料系ではAC単独の場合よりも短時間で粒子が形成でき、また粒子にはMAとACの両成分が重合した形で含まれていることが赤外スペクトル等の結果から判明した。 3.さらに効率的に反応性微粒子を作成するため、MAと二硫化炭素(CS_2)の混合気体にレーザ光を照射した。この場合にはエアロゾール微粒子の生成が主反応となりCS_2から生成するエアロゾールにMAが重合し新規な複合微粒子が生成していることが判明した。 以上の結果より、レーザ誘起気相反応を利用して新規な複合微粒子や有機薄膜が作成できることを実験的に示すことが出来た。
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