アクリル酸メチル(MA)を気体試料としてレーザ光(337.1nm)を照射し、その二光子過程を利用すると重合性の薄膜を短時間(30分程度)で形成できることを昨年度、報告した。そこで本年度はMAを含む混合気体にレーザ光を照射し複合性薄膜や微粒子を作成することを試みた。 1.先ず、気相のMAとアクロレイン(AC)を混合しレーザ光(337.1nm)を1時間程度照射すると、レーザ光の照射面に白色の重合性化合物が膜状に生成すると同時に、粒状の沈澱物がセルの下部に沈積することを見いだした。ACのみの気体試料にレーザ光を照射すると微粒子のみが沈積したが、ACにMAを添加した混合試料系の場合にはより短時間で1〜2μmの微粒子が沈積し微粒子にはMAとACの両成分が重合した形で含まれていることを見いだした。一方、石英窓上に生成した重合性薄膜にもMAが約85%、ACが約15%、共に重合した形で含まれていることが判り、複合微粒子と薄膜が同時に生成していること、また、薄膜の形成反応の方が微粒子の形成反応よりも効率的であることが判明した。 2.次に、反応性微粒子を効率的に作成することを試み、エアロゾールが生成するCS_2とMAの混合気体にレーザ光(337.1nm)を照射した。その結果、MAとCS_2の混合気体の場合でもエアロゾール微粒子の生成が主反応となりCS_2から生成するエアロゾールにMAが重合し新規な複合微粒子が生成していることが判明した。微粒子の平均径は約0.3μmであったが、その大きさはレーザ光の照射時間にあまり依存せず、CS_2の分圧を高くすると大きくなることが観測できた。 以上、本年度の研究より、レーザ誘起気相反応を利用して新規な複合微粒子や有機薄膜が作成できることを実験的に示すことが出来た。
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