研究概要 |
固相反応速度論の基礎的研究として、著者らは無機含水結晶の加熱脱水反応を取り上げ、実験的・理論的側面からの検討を進めてきた。とくに、硫酸リチウム-水和物の加熱脱水反応についての系統的な研究は意義があることが関連の国際会議等で認められた。本研究によって新たに得られた結果は第10回国際熱分析連合会議(1992年8月、英国)および第28回熱測定討論会(1992年10月28〜30日、東京)において発表された。その結果の概要は以下の通りである。 1.試料量を2.5,5.0,10.0,20.0 mgと変化させ、等温的TG法によって速度論的解析を行った結果、その脱水反応速度は試料量が少ないほど大きく、分解率α依存性が大きいことを見い出した。 2.みかけの速度定数kと1/mのプロットより、試料量mに依存しない速度定数を得ることができた。このような速度定数を用いて、アレニウスプロットをとり、反応の活性化エネルギーEと前指数因子Aを求めた。 3.従来の方法ではEとlogAが並行的に変化する傾向が避けられなかったが、本研究で得られた値は試料量に無関係であった。 4.制御反応速度熱分析(CRTA)法によるEの値は、Rouquerolらによって、E=65±9 kJ/molが得られているが、本研究ではE=98±2 kJ/molが得られた。これらの相違は動力学的補償効果によって説明できた。また、従来のような熱分析曲線の数学的解析法では、必ずしも物理化学的に意義のある結果は得られないことを指摘した。さらに、現在動力学的補償効果の原因を検討中である。 なお、無水物の再水和過程の速度論的研究については今後の課題としたい。
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