研究概要 |
1.各種の塩基配列をもつDNAオリゴヌクレオチドをホスホロアミダイト法によって化学的に固相合成した。これらの合成オリゴマーの二次構造のUV融解曲線から安定化エネルギーを算出した。その結果,GCとATの塩基対数が同どヌクレオチド二重らせんでもその安定性がかなり異なることが示された。例えば,GC塩基対が二つ,AT塩基対が六つからなるd(TCTATGGA)とd(AATGCATT)の自己相補的二重らせんの安定化エネルギー(25℃における自由エネルギー)は-6.05kcal/mol^<-1>,-8.48kcal mol^<-1>と,2.43kcal mol^<-1>も異なることがわかった。この理由は,塩基配列,特に最近接塩基対に依存するエネルギーの総和が,二重らせん形成のエネルギーを決定していることにあることが認められた。これらの実験値および計算値より,任意の一次塩基配列に対応するDNAの安定化二次構造を予測し得るエネルギーパラメータの開発を行なった。現在のところ,約100塩基程度のDNAの溶液中での安定化及び準安定化構造の予測に成功している。 2.各DNAオリゴマーの二重らせん構造の融解及び形成の反応を,温度ジャンプ装置を用いて追跡した。その結果,例えば,20℃においてd(TAGATCTA)及びd(TCTATAGA)では各々40ms,50ms以内で反応は終了した。また,二重らせん形成の活性化エネルギーは,d(TAGATCTA)及びd(TCTATAGA)で,各々-2.9,-3.5kcal mol^<-1>と負の値を示した。これらの結果及び安定化エネルギーの結果より,DNA二重らせん形成の核形成には少くとも二つ以上の塩基対形成が必要であることが明らかとなった。
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