研究課題
本研究では有機超伝導をめざした新しい構成分子の開発とその伝導体のキャラクタリゼーションを目的に研究を行なった。本年までの成果は、(1)有機アルミニウム試薬を用いた新しいTTF(テトラチアフルバレン)誘導体の合成ルートを開発し、いくつかの新規のTTF誘導体を合成した。(2)TTF骨格の中心にTTP(テトラチアペンタレン)を挿入した系についていくつかの誘導体を得、そのラジカルカチオン塩の伝導性と構造について調べた。具体的には(1)片方をメチルチオ、もう一端をエチレンジチオ基て修飾したTMET-TTPについて各種アニオンと15種類の塩を得た。このうち12種類は基本的に同じドナー配列を持ち、室温から200K付近までほぼ平担な電気抵抗を示し、それ以下で半導体となる。構造はQ型と呼ばれる二次元的なものであり、バンド計算の結果は二次元金属的で、分子が大きいことを反影して状態密度が通常のTTF系の2倍程度に大きくなっている。(2)両端をエチレンジチオ基で修飾したBEDT/TTPについては、溶解度が低いためドーピングの方法により塩を得、これらはいずれも高い伝導性を示したが、特にヨウ素ドープしたものは低温まで金属的な伝導性を示した。(3)片方をメチルチオ、もう一端をエチレンジオキシ基で修飾したTMEO-TTPについて、これまでに3種の低温まで金属的な塩を得た。(4)両端をメチルチオ基で修飾したTTM-TTPについては、特に(TTM-TTP)_2I_3において20Kまで金属的な挙動を見出した。以上のように超伝導体こそまだ見つかっていないが、多数の低温まで金属的な伝導体を得ており、また結晶構造も予想以上に二次元的なものであり、当初の分子設計は成功であったと考えられる。今後さらに優れた伝導体を得るために研究を継続する。
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