1.放電変調法の採用 ラジカルの吸収スペクトルの測定を行う分光システムの感度の向上をはかるため、電力増幅器を組み込み交流放電を可能にし、放電変調法により信号を観測する方法を取り入れた。C_3のb^3Πg-a^3Πu遷移のスペクトル線をテスト信号として用いて、高いS/N比のもとにスペクトル測定ができることを確認した。さらに、変調周波数を選択することにより、反応セル中に存在する複数のラジカルの中から寿命の差異を利用して目的のラジカルのみからの信号を取り出す手法を確立した。 2.C_3ラジカルおよびCCOラジカルの近赤外ダイオードレーザー分光 三原子・直線型で、基底あるいは準安定電子状態が三重項状態であり、典型的な振電相互作用の一つであるレナー・テラー効果によるエネルギー・レベル分裂がみられるC_3とCCOを取り上げた。 (1)C_3は一重項の基底状態[X^1Σ^+g]の〜18000cm^<-1>上方に三重項・準安定状態[a^3Πu]をもつことが知られているが、本研究では、その三重項状態間の遷移b^3Πg(100)-a^3Πu(000)バンド(〜7700cm^<-1>)の近赤外ダイオード・レーザー分光を行い、とくに励起状態b^3Πgでの振電相互作用の様子を明らかにすることを試みた。C_6H_6の放電によりC_3を生成しそのスペクトルを高いS/N比のもとに観測することに成功した。スペクトル線を帰属するまでには到っていないが、今後、波数領域を拡張してスペクトルを再測定するなどして、帰属を成功させ、有用な分子情報を得たいと考えている。 (2)CCOについてはA^3Πi(010)-X^3Σ^-(010)電子・振動遷移の中のΔ-Πバンド(〜11850cm^<-1>)のスペクトルの測定・解析を行い、我々が以前に得た結果と併用することにより、A^3Πi電子励起状態の振電相互作用の詳細を明らかにすることを目指している。これまでにサブバンドΔ_2-Πバンドの帰属に成功し、解析の結果レナー・テラー効果だけでは説明できない相互作用が存在するという重要な知見を得た。
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