研究概要 |
疎水性高分子と親水性高分子からなるブロック共重合体を水に溶解すると,臨界濃度以上で,疎水性高分子を核とする会合体(高分子ミセル)を形成する。これは,従来の界面活性剤ミセルに比べて,構造及び機能の面で様々な特長を持つことが予想されている。本研究は,いくつかの典型的な高分子会合体の中で光物理・光化学過程(電子エネルギー移動,エキシプレックス形成等)を行わせ,会合体のもつ反応場としての特長を明らかにすること,及び会合体の微視的構造を明らかにし,反応場としての特長との関連を検討することを目的とした。 平成4年度では,剛性のミセル核を形成するポリ(スチレン-エチレンオキシド)と柔軟なミセル核を形成するポリ(プロピレン-エチレンオキシド)を用い,次のような研究を行い,成果を得た。 (1)会合体中にフェナントレン(供与体)及びアントラセン(受容体)を可溶化させ,それらの間の一重項-一重項エネルギー移動に及ぼすホスト(会合体)の効果をけい光強度・けい光寿命の変化から検討した。その結果,均一系(メタノール溶液)に比べ,ポリ(プロピレン-エチレンオキシド)ではエネルギー移動効率が顕著に増大したが,ポリ(スチレン-エチレンオキシド)の場合はわずかに増大しただけであった。これは,前者では供与体及び受容体がミセルの核に取り込まれているのに対し,後者ではミセルの外殻に存在するためであると推定した。 (2)会合体中でのベンゾフェノン-ブロモナフタレン(供与体-受容体)間の三重項-三重項エネルギー移動に及ぼすホストの効果を検討した結果,上記(1)の場合と同様な傾向がみられた。 (3)けい光偏光度の測定により,ミセルの微視的粘度を求めた。
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