研究概要 |
疎水溶性高分子と親水性高分子からなるブロック共重合体を水に溶解すると,臨界濃度以上で,疎水溶性高分子を核とする会合体(高分子ミセル)を形成する。これは,従来の界面活性剤ミセルに比べて,構造及び機能の面で様々な特長を持つことが予想されている。本研究は,いくつかの典型的な高分子会合体の中で光物理・光化学過程(電子エネルギー移動,エキシプレックス形成等)を行わせ,会合体のもつ反応場としての特長を明らかにすること,及び会合体の微視的構造を明らかにし,反応場としての特長との関連を検討することを目的とした。 平成5年度では,ブロック共重合体プルロニックF68(構造式:EO_<78>PO_<30>EO_<78>)のミセルを用い,次のような研究を行ない,成果を得た。 1.エネルギー共与体にローダミンB及び6G、受容体にマラカイトグリーンを用いて電子エネルギー移動の実験を行った。共重合体の濃度変化及び温度変化の実験から,ミセルの形成と共にエネルギー移動効率が急激に減少することが判った。これより,用いた系では,ミセルの濃縮効果によるエネルギー移動の促進よりもミセル内の粘度の増加によるエネルギー移動の抑制が支配的であることが明らかとなった。 2.最近,プルロニックF68の会合状態が温度によって著しく変化することが動的光散乱法によって見いだされた。そこで,本研究では,いくつかのプローブの蛍光強度・蛍光寿命・蛍光偏光度の温度依存性を測定し,光散乱法による結果を検証した。また,同ミセルの性質について,光散乱法では得られない分子レベルの知見(微視的粘度など)を得た。
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