研究概要 |
N-Cl結合を含むアミン類分子およびそれらの熱分解生成物の赤外スペクトルを測定し、振動バンドの解析をab initio SCFMO計算の結果を参考にして行うとともに、反応機構について考察した。 (1) NH_2Clの高分解(0.01〜0.004cm^<-1>)スペクトルをフーリエ変換分光器を用いて800〜2300cm^<-1>の範囲で測定した。NH_2ひねり振動のν_0は1169cm^<-1>である。これは明確にひねり振動モードと帰属できるアミンのバンドの最初の例である。ν_0=1536cm^<-1>のNH_2はさみ振動にアミノ反転による約0.2cm^<-1>の分裂が観測された。NH_2縦ゆれ振動以外の振動モードで純粋な振動座標に沿う反転分裂としては最初の例である。縦ゆれの2倍音準位の反転分裂は約5cm^<-1>であり、これらのデータによりアミノ反転ポテンシャルを精密に決定することができる。 (2) CH_3NHClおよびC_2H_5NHClの赤外スペクトルによりN-Cl化により、親のアミン分子に比べ、いくつかのバンドの吸収強度が著しく増加することを見出した。他の多くのN-Cl化アミンのスペクトルと比べN-Cl伸縮バンドの特徴を明確にした。 (3) R_1(R_2)NCl(R_1,R_2:C_2H_5,C_3H_7)の熱分解においては、加熱温度に依存して脱HClとC-N解離とに反応が分岐する。低温側で脱HClによるイミンが生成する。CH_3CH=NClの2つの構造異性体を明らかにした。 (4)MOPAC-PM3法により、アミンを出発とする分子内水素結合および開環に引続く異性化反応、および脱H_2によるイミン形成反応の遷移状態構造と活性化エネルギーを計算し、実測の解釈および予測に役立てた。本計算結果は更に高度なab initio計算の出発点になるものである。
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