研究概要 |
本申請者は平成4年度に引き続いてビアクリジニリデンのN,N'-二置換体(BA)が非極性溶媒中空気存在下で活性アルミナ表面の関与する新奇な発光、吸着発光及び脱着発光についての機構の解明と、更に同様の発光を示す系の開発等について研究を行い、以下に記すような成果を得た。 1.吸着剤としての固体酸化物の吸着発光に及ぼす影響の検討:固体酸化物は構成する金属原子により酸化・還元能が異なる。アルミナの他に酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等各種の無色の固体酸化物を用い、BAの吸着発光をアルミナと比較検討した。この際金属酸化物の酸化活性の指標とされる金属イオンの電気陰性度に対して発光強度をプロットするとアルミナの頂点とする山型を形成するという興味深い結果を得、吸着発光について大いに考察を深めることができた。2.BA以外の基質の開発を目指して種々の化合物について検討し、いくつかの化合物が同様の発光系となることを認めたが、一例としてBAのベンゾローグであるビキノリデン(BQ)及びビイソキノリデン(BIQ)をとりあげた。酸化体であるジカチオンBQ^<2+>及びBIQ^<2+>塩をそれぞれ合成し、Na_2S_2O_4を用いて電子的に還元を行なった。BIQ^<2+>については脱酸素下でBIQが得られたが、これは酸素との反応性が大きく、アルミナ等の存在がなくても非極性溶媒中、空気中の酸素と反応して発光する。一方BQ^<2+>については一電子還元体であるBQ^+が微量の酸素によりBQ^<2+>に酸化されBQを得ることはできなかった。これらはサイクリックボルタモグラムの検討から説明できた。3.単離されたBIQは三重項状態にあって分子状酸素と反応してジオキセタン型の発光鍵中間体を経て発光すると思われたが、ESRによる確認は行なわれておらず、この発光反応の機構は今後の検討に値するものである。
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