研究概要 |
種々の核置換基を有する2-メトキシ-2-アリール-1,3-ジチオランの閃光光分解によって生成するジチオラニリウムイオンの水溶液中での挙動をくわしく調べ、2-アリール基の核置換基効果の解析を行った。また,比較のために2-アリール-1,3-ジチオラニリウムイオンの過塩素酸塩を単離して,同じ条件で反応を調べた.このカルボカチオンの水中での反応は,pH>3では水と反応して付加体を生成する段階が律速であるが,pH<2では付加体の四面体中間体の分解が律速となることがわかった.付加体の生成速度定数(k1)とその逆反応の速度定数(k-1)を,湯川-都野式で解析し,このカチオンと水の反応の遷移状態について興味深い知見を得た.1-エトキシ-1,3-ジチオランを,メタノール中で9-シアノアントラセン(9CA)受容体存在下に高圧水銀灯(パイレックスフィルター)光照射したところ,環開裂生成物を生じ,カルボカチオン生成は見られなかった.ラジカルカチオン中間体の環開裂が優先して起こったものと考えられる. 9-アルコキシ-9-アリールキサンテンのレーザー光分解を行ったところ,キサンテニリウムイオンの生成と分解が観測された.その分解速度は,アルコキシル基に依存しておりカルボカチオンの分解に対アニオンが影響していることがわかった.すなわち,生成したカチオンとアルコキシドイオンのイオン対が反応に関与していることが明らかになった. 9-ベンジルキサンテンは9CA受容体存在下の光照射では,複雑な生成物を与えたが,K_2S_2O_8の水溶液中では,キサンテノールを経てキサントンを生じることがわかった.この条件でのレーザー光分解によりキサンテニリウムイオンの過渡吸収が観測された.本光反応では,SO_4^-への電子移動によって生成したラジカルカチオンからベンジルラジカルとカルボカチオンが生じるものと考えられる.カルボカチオンと水から生成するキサンテノールは速やかに酸化される.
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