本研究では先ず、分子側面方向に長鎖アルキル基を有する化合物の液晶性の合成とその熱的性質を検討した。分子側面方向の長鎖は分子の液晶性を低下させる他、結晶性を下げる効果が見られ、低温に於て容易にガラス化現象を示す。ガラス転移温度は分子両端のアルキル鎖の伸長にともない高温側に移行し、側面方向の炭素鎖の伸長にともない、低温側に移行することがわかった。又、興味あることにこれらの炭素鎖の長さが異なる誘導体に於てはネマチック状態に於て2段階ガラス化現象が見られた。この2段階ガラス化は、一般の高分子に見られる複数段階ガラス化と類似の現象とみなすことが出来る。次に、上に示す高分子材料を合成しその液晶性を検討した。化合物1と2は何れも液晶性を有し、特にネマチック相を発現し易い。両端のアルキル鎖が長い場合、メクチック相の発現も見られる。末端がシアノ基の誘導体の場合はネマチック相のみを示すが、その分子配列は電場・磁場等により変化する。すなわち、無電界時ではホモジニアス配列となり、この状態では強い光散乱状態となる。又、電圧の印加により、ホメオトロピック配列となり、光に対し透明状態となる。この二つの状態を用いることにより、この高分子液晶はライトバルブ機能を有することがわかった。 尚、分子側面方向に長鎖を有する液晶は一般にスメクチック相を発現しにくいとされているが本研究で取り扱ったモノマー及びポリマー共に分子末端のアルキル鎖が長い同族体ではスメクチック相の発現が見られた。ただし、そのスメクチック相の組織は従来のファン組織とはかなり異なる。分子配列については今後の研究課題となった。 化合物3は2つのスメクチック相を示し、顕微鏡による組織観察では、高温側スメクチック相はA相であり、低温側がC相と推定出来た。これらの状態では電場応答性は認められなかった。
|