ビスマスを用いる有機合成について検討した結果、以下の事実が明らかになった。 1.トリブチルビスマスを用いるエステル化反応:トリブチルビスマスを酸素雰囲気下、酸クロリドあるいはカルボン酸と反応させると、対応するブチルエステルが収率よく得られた。 2.触媒量のビスマストリフラートを用いる立体選択的アルドール縮合反応:三塩化ビスマスとトリフルオロメタンスルホン酸から容易に得られるビスマストリフラートを触媒量用い、シリルエノールエーテルと種々のアルデヒドを反応させると、アルドール生成物が収率よく得られた。なおこの反応ではエリトロ体のアルドール生成物が選択的に得られることが明らかになった。また、酒石酸ジエチルエステルを不斉な配位子として不斉アルドール反応を試みたが、得られた生成物は12%e.e.であった。 3.金属ビスマス存在下、プロパルギルブロミドとアルデヒドとの反応:金属ビスマス存在下、プロパルギルブロミドと種々のアルデヒドを反応させると、アレン誘導体とアセチレン誘導体の混合物が得られた。 4.三塩化ビスマスを用いるエポキシドの開環反応によるβ-アミノアルコールの合成:三塩化ビスマスの存在下、エポキシドを芳香族アミンと反応させると対応するβ-アミノアルコールが得られることが明らかになった。 5.不斉ビスマス触媒を用いるアルデヒドの不斉シアノ化反応:触媒量の三塩化ビスマスあるいはビスマストリフラートを用いて、トリメチルシリルシアニドを種々のアルデヒドと反応させると、シアノヒドリンのシリルエーテルが定量的に得られた。光学活性な酒石酸ジエチルエステルから調製した不斉ビスマス触媒を用いてこの反応を試みたところ、58%の光学収率で光学活性シアノヒドリンが得られた。 6.三塩化ビスマスを用いるアリルトリメチルシランとアルデヒドからのピラン誘導体の合成:三塩化ビスマスの存在下、アリルトリメチルシランと2モルのアルデヒドを反応させると、ピラン誘導体が得られた。 7.三塩化ビスマス-亜鉛系を用いるイミンのアリル化反応:三塩化ビスマス-亜鉛系を用いて、アリルブロミドをイミンと反応させると、ホモアリルアミンが得られた。
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