表記ラジカルカチオンの構造と反応性について、主としてイリド型化合物を対象として研究した。さらにこれに関連し、ヒドロキシアセトフェノンについても研究した。結果を以下にまとめる。 1.立体規制されたアリールオキサジリジン→ニトロンへのラジカルカチオンを経る立体選択的開環において、選択性発現のメカニズムを置換基等の構造因子から解明した。 2.フルオレニリデンホスホラン等、安定性の高いイリドの一電子移動による活性化について検討した。その結果、o-プレニルオキシベンゼンジアゾニウム塩とは一電子移動→ラジカルカップリング→イオン的停止の過程によるジヒドロベンゾフラン誘導体の生成を見出した。この種イリドは可逆的な一電子酸化-還元が起こり、安定なラジカルカチオンを生成することを見出した。この特異な安定化の理由を解明するため、現在イオウイリドについても検討中である。 3.上記イリドの電子不足型アルケン、アルキンとの付加(環化)反応を検討した。メカニズムは必ずしも、一電子移動によるものではないのかもしれず、さらに研究を要するが、新たなC=PおよびC=C結合のメタセシス型の反応、イリドの生成が起こることが見出された。 4.ヒドロキシアセトフェノン類のハロゲン化アルミニウムおよび一電子受容型増感剤存在下の光反応について検討した。その結果、新規なアセチル基への臭化水素のanti-Markownikoff付加を見出した。またこの反応は、カルボニルの脱酸素を伴う臭素付加を伴った。一電子移動反応では特異な転位を伴う酸化反応が認められ、オキサビシクロヘプテノンおぬびo-ベンゾキノン誘導体が得られた。これらの反応のメカニズムについても考察した。
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