有機ケイ素化合物や有機スズ化合物など有機典型金属化合物の電極酸化反応についての基礎的な研究を行い、その成果に基づいて分子内炭素-炭素結合形成反応への展開を行った。 1.有機典型金属化合物の電極酸化 α位の炭素上に酸素官能基を有する有機ケイ素化合物や有機スズ化合物についてその構造と酸化電位、電極反応の選択性などについて詳しく検討した。その結果、有機ケイ素化合物などにくらべて有機スズ化合物は酸化電位が低く、炭素求核剤に影響を与えずに電極酸化することができるので、炭素-炭素結合形成反応に適していることを明かにした。 2.炭素-炭素結合形成反応への展開 分子内反応 炭素カチオンに対して求核剤となるオレフィンを分子内に有する有機スズ化合物を合成し、電極酸化による炭素カチオン生成を利用して環化反応を行った。アルコール中で反応を行った場合には環化反応が進行せずスズのついた炭素にアルコールが導入された生成物が得られたが、ジクロロメタンで電極反応を行うと効率よく環化反応が進行することを明かにした。興味深いことに元のオレフィン炭素の一方にはフッ素原子が導入された。支持電解質として用いたBu_4NBF_4がフッ素源となっていると推定される。フッ素源としてはBu_4NPF_6も有効であった。また、6員環や7員環への環化は効率よく進行したが5員環への環化は進行しなかった。まだ詳細な機構は明らかではないが、この反応は有機フッ素化合物の合成法として今後の巾広い応用が期待される。
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