研究概要 |
エステルエノレートクライゼン転位の持つ幾つかの問題点を、アミドエノレートのアザクライゼン転位によって解決することを計画した。その結果を以下に列挙する。 1.N-(2E)-ブテニル-N-ブチルプロパナミドのリチウムエノレートの転位を行ったところ、反応は良好な収率で進行し、高いsyn/anti選択性(99.5:0.5)を示した。これはエノレートの幾何異性をZ形、遷移状態をイス形にほぼ100%制御できたことを示し、エステルの転位の選択性を凌いだ。 2.次にアミド窒素原子上に不斉補助基を導入して転位骨格外からの遠隔不斉制御型反応に発展させた。例えば、N-(2E)-ブテニル-N-(1S′)-フェネチルプロパナミドの反応では、可能な四つの立体異性体のうちanti体は生成せず、二つのsyn体のみが生成し、その比率は89:11であった。不斉補助基の効果を系統的に精査し、最終的に2,2-ジメチル-1-フェニルプロパナミンを用いることで不斉誘導能を95:5まで高めることができた。 3.この反応は水酸基やアミノ基を持つものにも適用でき、立体選択性の規則がどの場合も同じであることが明らかになった。 4.この反応を利用して生理活性天然物(-)-verrucarinic acidやD-alloisoleucineなどの高立体選択的短段階不斉合成に成功した。さらにより複雑な天然物(-)-isoiridomyrmecinの立体選択的短段階不斉合成にも成功した。
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