研究概要 |
純粋培養したシャットネラの藻体と培養液に含まれる魚毒活性成分の検索および構造決定を行なった。まず、(i)シャットネラの藻体をエーテル,酢酸エチルおよびクロロホルムで順次溶媒抽出した。各画分を、ヒメダカに対する致死活性を指標として,ゲルろ過および高速液体クロマトグラフィーにより分画・精製した。その結果,いずれの画分からも魚毒活性成分として遊離脂肪酸を単離・同定した。遊離脂肪酸の組成は,C_<16>,C_<18>,およびC_<20>の飽和および不飽和脂肪酸であった。それらのうち,ステアリドン酸(C_<18:4>)は最も強い致死活性(最小致死濃度LC_<100>=7ppm)を示した。また,これまで致死活性がないとされていたパルミチン酸(C_<16:0>)もpH9.0において強い活性(LC_<100>=12ppm)を示すことが見出された。ついで,(ii)シャットネラの培養液のエーテルおよび酢酸エチル抽出部に含まれる魚毒活性物質を藻体に用いたと同様の方法により分画・精製した。致死活性は,いずれの抽出部においてもみられ,魚毒活性物質として,藻体において検出されたのと同様の遊離脂肪酸を単離・同定した。培養液に遊離脂肪酸が検出されたことより,シャットネラは魚毒活性物質である遊離脂肪酸を生体内に蓄積するとともに体外に放出していることがわかった。さらに,(iii)シャットネラの培養液のエーテル抽出物より,魚毒活性物質として2種類の含窒素化合物(C_<29>H_<29>N_3O_<10>およびC_<29>H_<27>N_3O_<10>)を見出した。そこで,これらの含窒素化合物が多く生産される培養条件の検討を行なった。異なる培養条件(pH,硝酸カリウム濃度)のもとで藻体の培養を行ない,含窒素化合物の含有量を比較した。その結果,含窒素化合物が多く生産される培養条件としては,pHが通常の海水よりわずかに高い9.0培養液であること,高い硝酸カリウム濃度(144mg/l)の培養液であることを明らかにした。
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