研究概要 |
純粋培養したシャットネラの藻体の酢酸エチル可溶性画分に含まれる魚毒活性成分の検索および構造決定を行なった。酢酸エチル可溶性画分の魚毒活性成分は飽和および不飽和の脂肪酸混合物で,ミリスチン酸(35.3%)とパルミチン酸(27.1%)およびリノール酸(6.8%)とリノレン酸(9.6%)が主成分であった。つぎに,脂肪酸による魚毒活性発現機構の解明を計った。まず,(i)炭素数18の不飽和脂肪酸類のヒメダカに対する最小致死濃度(LC_<100>)を調べた。また,抗酸化剤(α-トコフェロールおよびアスコルビン酸塩)が活性に与える影響も調べた。その結果,C_<18>の不飽和脂肪酸の魚毒活性は,不飽和度が高くなるにつれて高くなった。しかしながら,抗酸化剤の存在下では活性が著しく低下した。これらのことから,不飽和脂肪酸による毒性発現機構は,藻体の不飽和脂肪酸の自動酸化によって発生するラジカル種が生体膜を損傷することによっていると考えられた。一方,(ii)飽和脂肪酸のミリスチン酸とパルミチン酸は,pH8.1において不飽和脂肪酸と同程度の強い活性を示したが,pH4.5では活性が低下した。pH4.5では,これらの脂肪酸は水に難溶であり溶存量が少ないためと考えられる。これに対して,溶解度の大きいデカン酸とラウリン酸の活性はpH4.5において強くなった。飽和脂肪酸類(C_<10>〜C_<18>)のpKaはいずれも4.9であることから,pH4.5では70%以上が非イオン型として存在している。したがって,飽和脂肪酸による致死機構は,溶存している非イオン型の飽和脂肪酸と生体膜との疎水的な相互作用によっていると考えられた。
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