研究概要 |
人工レセプター包埋脂質二分子膜センサーを作製し,金属イオンに対する電位応答の選択性を評価した.具体的には,10種の人工レセプター(モノ及びビスクラウンエーテル,クリプタンド,非環状ポリエーテル)を単分子膜貼り合わせ法により脂質二分子膜中に包埋し,それらについて膜電位,膜コンダクタンス及び膜抵抗を測定した.その結果,ビス(12-クラウン-4)誘導体,ジベンゾ-30-クラウン-10,クリプタンド221D及び222D,ETH1001,ETH4120,ETH117について電位応答がえられた.そのうち,ジベンゾ-30-クラウン10及びETH1001についての電位応答の選択性は液膜イオン選択性電極の示す選択性の序列とは異なることが見出された.すなわちジベンゾ-30-クラウン-10包埋脂質二分子膜センサーの示す選択性(Na^+)K^+)は液膜系(K^+)Na^+)と異なり,またETH1001包埋脂質二分子膜センサーの選択性(Na^+,Li^+)Ca^<2+>は液膜系でのCa^<2+>〉〉Na^+,Li^+と異なった.これら以外のレセプターでは液膜系と同様な結果となった.膜電位応答を示さなかったジベンゾ-18-クラウン-6,ジヘキシル-18-クラウン-6及びビス(ベンゾ-15-クラウン-5)誘導体については,膜コンダクタンス及び膜抵抗の測定結果より,上述の単分子膜貼り合せ法では平面二分子膜中に包埋されないことが明らかになった.これらの結果は,レセプター包埋脂質二分子膜のイオン認識能は均一溶液系と異なることを示しており,脂質二分子膜やLangmuir-Blodgett膜等の配向膜を用いることにより新しい化学センシングシステムを構築できることを示唆する.
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