研究概要 |
1.置換不活性な金属イオンであるヘキサアクアロジウム(III)がトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)とピクリン酸(HPic)によって,pH3-5でヘプタンのような不活性な溶媒に定量的に抽出されるという画期的な成果を得た.しかもこの抽出は25℃で1分以内に平衡に達することがわかった.また,抽出に対する有機溶媒の効果は大きく,ヘプタン>ベンゼン>1,2-ジクロロエタン>ニトロベンぜン>クロロホルムの順に抽出性は低下した.抽出平衡の解析から,ロジウム(III),Pic,TOPOが1:3:4の会合体として抽出されることを明かにした.今後,有機相中でのロジウム(III)の水和について,カールフィッシャー滴定及びNMRによる検討を行う予定である. 2.置換不活性なコバルト(III)錯体,トリス1-ニトロソ-2-ナフトラト及びトリス2-ニトロソ-1-ナフトラト錯体を合成し,二,三のハロゲン化フェノールとの外圏型錯体の生成について基礎的検討を行った.四塩化炭素中でペンタフルオロフェノールや3,5-ジクロロフェノールと混合するとコバルト(III)錯体の溶解度は著しく増大し,また,吸収スペクトルは大きく長波長にシフトし,外圏型錯体の生成を強く示唆する結果を得た. 3.アルミニウム(III)及び鉄(III)イオンはアセチルアセトン(Hacac)単独ではヘプタンに部分的(<50%)にしか抽出されないが,3,5-ジクロロフェノール(DCP)が存在するとはるかに低いpH領域から定量的に抽出されることを発見した.抽出平衡の解析より,M(acac)_3にDCPが1,2,及び3分子(Fe系)会合した外圏型錯体を生成することを明らかにした.アルミニウム(III)については400MHz^1H-NMRを用いて,この会合がDCPの水酸基プロトンとアルミニウム(III)に配位したacacの酸素原子との間の水素結合によることを示した.
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