研究概要 |
1992年8月、北大東島露頭から採取した第四紀炭酸塩岩試料62個について粉末X線回折により構成鉱物を同定し、主成分(Ca,Mg)及び少量成分(Sr,Na,F,P)の分析結果から同島ドロマイト岩の生成環境を考察した。 1.同島の地表に分布する炭酸塩岩はかつてのリーフと思われる屏風岩の標高50m付近でもドロマイト化され、Mg^<2+>に対してCa^<2+>の多いプロトドロマイトからなる。ドロマイトは全島域にわたって分布するが、西港及び江崎港にかけての海岸線ではドロマイトよりもカルサイトを相対的に多く含む炭酸塩岩がほかの地域に比較して多く残存する。 2.カルサイト中のF含量が100ppmあるいはそれ以下であるのに対して、ドロマイトは採取地点に関係なく約500ppmのF含量である。これは同島のすぐ南に位置する南大東島のドロマイト岩のF含量と同じである。F^-はMg^<2+>と親和性が強く、海水の主成分であるMg^<2+>の濃度によってMgF^+とF^-の相対的な濃度比が変化することから、両島のドロマイトはほぼ同じ塩分濃度のドロマイト化溶液の作用によって生成した可能性が高い。 3.カルサイト中のNa含量が100ppm以下であるのに対してドロマイト中のNa含量は約300ppmであり、Fと同様に南大東島のドロマイトとほぼ同じ含量である。これらはドロマイト化溶液が淡水と海水の混合溶液から生成したとされるドロマイト中のNa含量の範囲内である。従来、南北両大東島のドロマイトは濃縮海水の作用によって生成したとする説が有力であったが、今回の結果は希釈海水による生成の可能性を示唆するものである。
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