研究代表者らは、すでに当該研究室で理論及び実験的に確立された電気化学測定法を用い、ニトロベンゼン/水(NB/w)界面におけるクラウン化合物(L)のイオン選択性及び液膜輸送能力を決定する因子の定量化を、前年度に引き続き検討した。さらに、比較の為に新規非環状機能性キレート化合物を取り上げ、その機能を評価した。 1.一価金属イオンに対するLのイオン選択性を平衡論的に明らかにする為、Lとして市販ビス(クラウン)化合物及び比較イオノフォアとして新規合成非環状キレート化合物を選び、それらのNB/w界面透過挙動を検討した。両化合物とも、イオン選択性は、イオン単独の界面透過性とNB相中における生成錯体の安定性の大小の双方に比例した。これらの結果より見積られた選択性は、NB誘導体を膜溶媒とし、上記化合物を含むイオン選択性電極(ISE)のポテンショメトリーにより報告された結果とも、よい一致を示した。 2.電荷の異なる金属イオン間でLのイオン選択性を評価した結果、本評価法では、ISEの場合に指摘されている、目的イオンの活量変化等による選択性の値がほとんど変化しないことが判明した。また、見積られるNB/w二相界面における選択性が、w相中に二種類の一価金属イオンが共存した系と単独イオン系、いずれの場合も、同じであることを明らかにした。 3.以上の1及び2の結果は、油/水二相界面系におけるLのイオン選択性は、主として油/水界面近傍の化学平衡過程に由来するものであり、各相中に存在するイオン種の拡散挙動にはあまり影響を受けないという従来からの指摘を実証した。 4.新規化合物の合成・機能評価については、本年度まで、特定イオンに高い選択性を有すると期待されるLは、得られていない。
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