従来のイオンクロマトグラフィーでは試料溶液中の分析目的イオン濃度が検出限界以下の場合、濃縮カラムを用いて目的イオンを濃縮後、定量するため、多量の試料溶液を必要とする。本研究は、試料中の目的イオンのモル数を増幅反応(Amplification Reaction)による化学的に増大させた後、イオンクロマトグラフィーで定量すれば、従来のイオンクロマトグラフィーに比べて、少ない試料量で数倍から百数十倍の高感度が達成できると期待される新規な方法の確立を目的とした。本研究において、以下の成果が得られた。 (1).本研究費で購入したイオンクロマトグラフ(日立L-6000)はジュアルポンプによる超パルス液送ユニットを備え、安定した送液とベースが得られるため、本研究は有効に遂行され、多くの成果が得られた。 (2)ヨウ化物イオンの定量:テフロンビーカー(3ml)にI^-溶液の数100μlを取り、5%酢酸20μlと飽和臭素水10μlを加えると、次式の増幅反応により、I^-は6倍量のBr^-に増幅される。電子レンジでビーカー中の溶液 I^-+3Br_2+3H_2O→IO_3^-+6H^++6Br^- を加熱し、未反応の臭素を除去後、生成したBr^-を定量した。この時、増幅反応で生成したBr^-の定量下限は1ppmであり、I^-の0.5ppmを間接的に定量できた。従来のイオンクロマトグラフィーではI^-の定量下限は15ppmであり、30倍の感度増大が達成された。 (3)亜ヒ酸イオンの定量:AsO_2^-はこれまでイオンクロマトグラフィーで分析された例はないが、増幅反応により、1モルのAsO_2^-を12倍のBr^-に増幅し、Br^-を定量して、AsO_2^-を高感度に間接定量できた。 (4)研究成果は、日本分析化学会第41年会(1992年9月 京都)において「増幅反応を用いるヨウ化物イオンの高感度イオンクロマトグラフィー」の演題で発表した。学術雑誌への発表を準備中である。
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