研究概要 |
二次平衡クロマトグラフィーを用いる溶液内相互作用の評価と検出に関して今年度は以下に述べる点について検討し,裏面に示す業績をあげた。 1.ミセル相への無機陽イオンの分配の評価とその分離への応用。 遷移金属イオンの分離に,適当な錯形成剤を用いると有効であることはよく知られている。しかし,ミセル相への分配をイオン交換モデルに基づき詳細に検討したところ,ミセルの裏面電荷により錯形成が抑制されていることがわかった。このような効果をすべて考慮した保持モデルを考え,これに基づいて計算した結果,金属イオン間の相互分離の改善金属イオンと有機非イオンの同時分離,保持予測,分離の最適化などを図ることが可能になった。 2.ポリエーテルの分離と溶液内での金属イオンとの錯形成 既に,アルカリ金属イオン型カチオン交換樹脂がポリエーテルの分離,および溶液内での錯形成評価に有効であることは報告した。この方法を今年度クラウンエーテルの錯形成評価に適用し,種々の結果を得た。クラウンエーテルのメタノール中での錯形成定数を本法に従って求めたところ,文献値とよく一致し,本法が適切な方法であることが明かになった。また,非環状ポリエーテルでは,樹脂相,溶液相中で生成する錯体構造に大きな相違が見られたのに対し,クジッドなクラウンエーテルでは両相間での錯体構造に違いが見出されなかった。熱力学的パラメーターを合理的に説明するには,樹脂相、溶液相での溶媒和の違いを考慮する必要があると考えられ,クラウンエーテルがイオン交換樹脂の対イオンの溶媒和状態を探るプローブとなり得ることが示唆された。 ポリエーテル型非イオン界面活性剤の2次元分離にも本法を適用し,疎水基,親水基両方に基づくキャラクタリゼーションが可能になった。
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