本研究によって得られた成果は次のようにまとめることができる。 1.イオンのミセルへの分配。 イオンのイオン性ミセルへの分配は、静電的相互作用便宜的にはイオン交換モデルで表すことができる。例えば、陽イオンの陰イオン性ミセルへの分配は、溶液中に存在する配位子、対イオンなどの濃度によって記述できる。2次平衡液体クロマトグラフィーによる解析では、配位子による錯形成は、ミセルの表面価電によって抑制されていることがわかった。また、陰イオン性ミセルの分配挙動を同様のモデルで解析することにより、ミセルの解離定数を評価することができることもわかった。 2.ポリエーテルの錯形成。 クラウンエーテルを対象として錯形成挙動を調べた。その結果、2次平衡クロマトグラフィーで、錯形成定数を精度よく評価できることがわかった。クラウンエーテルでは、固定相、溶液相、いずれにおける錯形成にも熱力学的、構造的差異が大きくないことがわかったので、これを利用してクラウンエーテルの効率のよい分離法、より信頼性の高い錯形成定数を求めるための実験条件の最適化法など開発した。 3.ポリオキシエチレンの立体配座変化。 ポリオキシエチレンの分配挙動は、その立体配座の変化によって影響される。溶液中で安定な立体配座間にはそのエネルギー差に応じて平衡が確立されていると考えられる。そこで、分子力学法を用いて安定立体配座間のエネルギー差を求めると共にそれを用いて分配挙動を解析した。
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