4-位にベンゾイル、ナフトイル基等を置換した数種の4-アシル-5-ピラゾロン類を合成し、それらの銅、亜鉛錯体と、分子内に一個ないし二個の官能基を有する中性配位子との会合反応を分光学的に研究した。 中性配位子として一分子中に窒素原子と水酸基を同時に有するアミノアルコール類、ヒドロキシピリジン類、ピリジルカルビノール類について、有機溶媒(主としてクロロホルム)中での会合定数を測定した。会合定数はアシルピラゾロン類の酸としての強さ、窒素原子の塩基性の強さ、立体効果に影響される。同時に、水酸基を持つものとはもっと安定な付加錯体を生成し、水酸基とアシルピラゾロンの配位酸素原子との間の水素結合が観察された。この水素結合の強さは、窒素原子と水酸基との距離(メチレン鎖の長さ)、アシルピラゾロンの4-位の、特に電子求引性の置換基にも依存することが明らかになった。 銅錯体との反応において、水酸基を持たないアミン類、ピリジン類の場合と比較すると、二点で結合する場合には反応のΔH、ΔSは共に小さくなった。亜鉛錯体と二官能性配位子との反応では、水酸基に結合しているメチレンのプロトンはそのシグナルが高磁場シフトしていることが確認された。これは水酸基が配位酸素原子に接近したためにアシルピラゾロンの4-位のベンゾイル、ナフトイル基の環電流の効果を受けているためである。このようにアシルピラゾロン錯体と上記の中性配位子との二点相互作用は、熱力学的パラメーターと^1H-NMRスペクトルによっても確かめられた。
|