研究課題/領域番号 |
04640555
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中島 進 岡山大学, 資源生物科学研究所, 助教授 (60033122)
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研究分担者 |
青山 勲 岡山大学, 資源生物科学研究所, 教授 (10026239)
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キーワード | かび臭物質 / ジオスミン / 2-メチルイソボルネオール(MIB) / ラン藻 / 鉄 / キレート剤 / 光還元 / ジデロフォア |
研究概要 |
水道水の異臭味に関わるかび臭物質(2-メチルイソボルネオール、ジオスミン)を産生するラン藻の増殖機構を明らかにするため、A.macrospora、P.tenue、O.tenuis、O.brevis、A.spiroidesの5種のラン藻を用いて、これらのラン藻の生育の必須元素であり、天然水中において増殖制限因子になると鉄の相互作用を検討した。O.brevisはリン酸鉄を鉄源として、さらにリン源としても利用できることが判明した。さらにO.brevisは鉄(III)ときわめて高い安定度を形成する錯体を形成するキレート剤EDDHAやHBEDを過剰に加えても効率よく鉄を吸収することができ、細胞表層に強力なキレート形成基を有することが示唆された。他の4種のラン藻はこれらのキレート剤の過剰のもとでは増殖阻害を起こした。クエン酸鉄(III)を用いてこれらのラン藻の培養実験を行ったところ、O.brevisは鉄源として効率よく利用できたが、O.tenuisはクエン酸鉄の添加量を増しても増殖は完全に阻害された。クエン酸鉄(III)は光により容易に分解するため、O.tenuisはクエン酸鉄を鉄源として利用できないことが判明した。A.macrospora、P.tenue、A.spiroidesはクエン酸鉄を鉄源として増殖することはできたが、鉄の吸収効率は悪く、光合成色素の生産が不十分であった。こうしてO.tenuisは光により2価に、しかも徐々に還元される有機態鉄(III)を必要とすることがわかった。従ってO.tenuisは鉄に関する環境適応の点からは5種のラン藻の中で最も劣っていた。またラン藻の細胞による鉄還元能はO.brevisが最も優れ、O.tenuisが最も劣ることが明らかになった。以上の結果、O.brevisは様々な形態の鉄を利用でき、特に天然水中で溶存態鉄に比べ多く存在するコロイド鉄を利用でき、幅広い環境変化に適応していることが明らかになった。
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