研究概要 |
シクロデキストリン(CD)は環状のオリゴ糖であり、空洞を有する特異な構造をしている。CDが水溶液中で種々の疎水性溶質をゲストとして空洞内部に取り込み包接体を形成する現象を分析化学に応用すべく、基礎的研究を行った。ゲスト分子とCD空洞との立体適合性、包接体の水溶解度、包接体の組成、および包接体からのゲスト分子の発散挙動について研究した。 前年度の研究で開発した方法を用いて、【.encircled1.】二種類の異種ゲスト物質が共存するときのCD包接体沈殿の組成がゲスト物質のどのような物性によって決定されるかを明らかにする研究を行なった。beta-およびgamma-CDはナフタリンとビフェニルの異種溶質混合ゲストの存在下で水溶液中から沈殿することがわかり、その沈殿物中のナフタリンとビフェニルのモル比は、各々のゲストの水に対する溶解度とCD:ゲストの1:1会合定数との積の比に等しいことが判明した。その成果は“Cyclodextrin Precipitates with Naphthalene-Biphenyl Mixed Guests in Aqueous Medium"と題して、Bull.Chem.Soc.Jpn,,67,578-581(1994)に公表した。【.encircled2.】21種類のゲスト物質を包接させたCD錯体を調製し、水溶液中から単離し、空気中に放置したとき、ゲスト分子の揮発損失がゲスト物質のどのような物性に関係しているかを研究した。その結果、ゲスト分子とCD空洞との立体適合性が重要であるという結論が得られた。この研究は、現在、“Change of Guest/Host Molar Ratios in Dry Cyclodextrin(Host) Precipitates with Volatile Nonelectrolytes(Guests) Prepared in Aqueous Medium"と題してまとめているところである。
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