研究概要 |
本年度においては,シリコンフタロシアニン高分子錯体の各環の間の相互作用の解明のための基礎的な合成手段の確立と,モノマーからテトラマーまでの比較的小さなオリゴアーについての主に時間分解パルスEPRと吸収スペクトルを用いた分光測定によるデータの集積を目的として研究を進めてきた。 第一の合成面においては,当初原料確保の遅れなどから若干進展が遅れた。しかしながら12日以降,長鎖アルキル基を有するニトリル原料を用いて,よく分子量分画された試料の合成に着手した。ここでの合成法の特長は,重合度が2,3,4,6,8,12などとびとびではあるが単分散の分子量を持つポリマーを合成できる点にある。従来この種の化合物の分子量は,きわめて不正確な方法で推定された平均分子量でしか議論されて来なかったことを,本研究では技本的に改善する見通しがついたと考える。 第二の点では,文献既知の電子スペクトルの再検討を行った上で,時間分解EPR法による励起三重項状態におけるスピ-ンスピン相互作用を調べて来た。その結果重合度が大きくなるにつれて環間相互作用に占めるCharge Resonance型相互作用の寄与が増大するという注目すべき結果が得られた。これらは昨秋のESR討論会,錯体化学討論会等で発表した。 最後に,本研究と密接な関係をもつ光合成アンテナ系におけるクロロフィル会合体の構造解析においても,いくつかの成果を上げた。
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