研究概要 |
プテリン依存フェニルアラニンヒドロキシラーゼの反応機構を解明する目的で,銅(II)モデル錯体,反応非活性型プテリン補酵素,基質を配位結合および弱い相互作用で組み上げた多元系における構造と性質を明らかにし,酸素,反応活性型プテリン補酵素を加えた多元系が織りなす酸化還元反応について多元構造との関連を中心に追究することによって反応メカニズムを明らかにすることを狙いとした. 銅(II)ープテリン-6-カルボン酸ー2,2'-ビピリジンー単座配位子四元錯体が安定に存在することをスペクトルから確認し,酵素反応において金属ー補酵素ー酵素ー基質四元錯体を形成する可能性を反応非活性型プテリンを用いた静的多元モデルを構築することにより示した.反応活性型プテリンを用いた動的多元モデルでは,まずプテリンが金属イオンと結合した後に電子移動が起こり,還元された金属イオンとプテリンラジカルが形成することがストップトフロー分光法により判明した.酸素を加えた系では酸素がプテリンラジカルと金属イオンにより活性化をうけ,さらにホモリティックに開裂してヒドロキシラジカルとプテリンラジカルになることをESRスピントラップ法により明らかにした.さらに基質が加わった酵素反応モデル系では高速液体クロマト装置により基質の水酸化反応が多元系のもとでのみ起こることを明らかにした.さらに反応特異性が分子内の弱い相互作用によっていることを示唆した. これらのアプローチは確立された情報を生かしつつ,より高次の反応性を賦与したもので,従来にない新しい研究方法により,酵素反応系がプテリンの多元系を形成しやすい特性と多元系での酸素の活性化が判明した.
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