研究課題/領域番号 |
04640581
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 成年 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (70029875)
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研究分担者 |
宇野 晃成 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (20213473)
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キーワード | 面不斉錯体 / シクロペンタジエニル配位子 / シクロブタジエン / コバルト / 陰イオン捕捉 / 不斉認識 / 光学分割 / アトロプ異性 |
研究概要 |
昨年度より我々は、面不斉シクロペンタジエニル金属錯体(Cp-M)の合成、研究を行ってきている。昨年度末までに、Co-並びにNi-Cp錯体の合成について報告した。特に、Co錯体は、同一分子内に三種の不斉要素を含む特異な化合物である。そこで本年度は、先のコバルト錯体中に見出された軸不斉部の発現機構、及び新たな錯体としてフェロセンと等電子構造であるカチオン性コバルトセニウム錯体の合成、光学分割及びその性質についての検討を行った。 まず昨年度合成したコバルト錯体中に見出された軸不斉の発現機構を明らかにするために、関連錯体のX線構造解析並びに円二色性スペクトル測定を行った。その結果、光学分割のために導入した(-)-メンチル基は、シクロブタジエン環上のフェニル基の間に位置しそれらの自由回転を抑制すると共に、フェニル基同士の立体配座を決定していることが明らかになった。またこの構造は溶液状態でも保たれていることが判った。以上のことから、今回見出された軸不斉は、(-)-メンチル基による遠隔からの立体配座固定と考えられ、アトロプ異性の新例と見ることができる。 次にコバルトセニウム錯体は、文献を参考に、Co(acac)_2錯体に、THF中C_5Me_5Liを、続いて光学活性基を有するCp′Naを反応させ、ジアステレオマー混合物として合成した。これらの混合物は、再結晶若しくは逆相HPLCを用いて分離できることが判った。それぞれのジアステレオマーは、濃塩酸中での加水分解により光学活性基を除去し、対称体へと導くことに成功した。これらは、面不斉コバルトセニウム錯体の初めての例である。また本錯体の性質を調べたところ、溶液中で各種無機、有機陰イオンを捕捉すること、更にホスト錯体の不斉環境によってゲスト陰イオンの立体を識別できることが明らかとなった。また置換基の異なるホスト錯体を合成し、構造と会合定数との相関を検討したところ、陰イオンの捕捉に必須とされてきた水素結合を取り得ない錯体においても、適度な疎水空間を付与することにより、会合体を形成しうることを明らかにした。
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