研究概要 |
1.配位子および錯体の調製 合成した配位子L=N-ベンジルエチレンジアミン(Been)は新規化合物である。また、光学活性アルキル基としてR-1-(2-ヒドロキシメチル)プロピル基とS-2-ヒドロキシプロピル基を持つ、2,2-ジメチル-1,2-エタンジアミンのジクロロ白金(II)錯体の調整、構造解析を行った(公表ずみ)。[Fe(CN)_4(L)]^<2->,[Fe(CN)_4(L)]^-,[Co(NH_3)_4(L)]^<3+>,[Pt(bipy)(L)]^<2+>,[Pt(phen)(L)]^<2+>錯体は、既に報告した方法に従って合成した。 2.溶液および固体状態での構造 重水溶液中、[Pt(bipy)(L)]^<2+>[Pt(phen)L]^<2+>錯体の400MHz ^1H NMRスペクトルよりキレート環はN-アルキル基が擬アクシャル配向をとっていることがわかった。さらにBeen錯体では、一方の芳香環ジイミン(bipy,phen)の環の^1Hが著しく高磁場シフトしこれは分子内での芳香環同士の相互作用によるものであることがわかった。水-エタノールから得られた[Pt(bipy)(been)](NO_3)_2・H_2OのX線結晶解析では、N-ベンジル基は二級アミンに擬アクシャル配向しベンジル基のフェニル環と白金の関係はantiをとっていることがわかった。これは、再結晶時にエタノールを用いたためだと思われる。 3.配位子脱水素反応のN-アルキル基による反応性の向上 前述のテトラシアノ(1,2-ジアミン)鉄(II)錯体は、脱水素反応を起こしジアミン(I)→モノイミン,(II)→ジイミン鉄錯体,(III)を形成する。Been錯体において、(I)-,(II)-,(III)-鉄(II)錯体の単離に成功した。さらに鉄(II)錯体(I),(II)についてK_3[Fe(CN)_6]による酸化反応速度をジイミンの525nmの吸光度の増加を測定して求めるとv=d[Fe(CN)_4(ジイミン)]/dt=k[Fe^<11>][[Fe^<111>(CN)_6^<3->]][OH^-]で表すことができた。三次速度定数は、(I),(II)錯体でそれぞれ2.09×10^5,1.91×10^5M^<-2>S^<-1>であった。これよりN-ベンジル基の置換により、二級アミン部位での配位子脱水素反応(I)→(II)が加速され、律速段階が(II)→(III)へ移行したためであると考えられる。
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