研究概要 |
私たちはこれまで、モリブデンと硫黄からなる不完全キュバン型アクア錯体[Mo_3S_4(H_2O)_9]^<4+>(A__-)が、いろいろな金属と反応して、混合金属キュバン型Mo_3MS_4(M=Fe,Co,Ni,Cu,Sn,Hg)骨格を持つ錯体となることを報告してきた。インジウムの化合物の例は非常に少なく、硫黄原子を配位子とする錯体の例は知られていない。インジウムを含む新規化合物の合成は、インジウムの物性の新たな発見につながる期待が持たれ、学問的にも実用面からもたいへん興味深い。 私たちはシングルキュバン型(図1)モリブデンーインジウム錯体[Mo_3InS_4(pts)_2(H_2O)_<10>](pts)_3・13H_2O(B__-)に加えてサンドイッチキュバン型(図2)インジウムーモリブデン錯体[(H_2O)_9MO_3S_4InS_4Mo_3(H_2O)_9](pts)_7・nH_2O(C__-)の合成にも成功し、良好な単結晶が得られたのでX線構造解析を行なった。得られた錯体について電子スペクトル、電気化学的性質の測定をはじめ各種の物性測定を行なった。A__-を「硫黄を配位原子とする3座配位子」と考えると、化合物はB__-はインジウムに3つの硫黄と3つの酸素(2つはpts^-から、そして1つは水から)を配位原子とする6配位8面体錯体と考えることが出来、また化合物C__-は6つの硫黄原子を配位子とする6配位8面体錯体と考えることが出来る。 結果の一部はすでにInorg・Chem.に投稿し、現在印刷中である。
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