平成4年度に行った行動観察を継続するとともに、行動記録を行ったコロニー内の個体間血縁度を測定するための方法の開発と取り組んだ。まず行動観察は、エゾアカヤマアリ、クロヤマアリ、シワクシケアリ、カドフシアリなどで継続し、次の結果を得た。1)異なるコロニー間では、卵・幼虫・さなぎが比較的容易に受け入れられるが、この傾向は単女王性コロニーよりも多女王性コロニーでより強い。成虫は未成熟個体よりも攻撃され易いが、callowなど若い成虫は外役個体などの古い成虫よりも比較的容易に受け入れられることも多い。2)異コロニー個体への攻撃性と進化的系統関係の間には顕著な相関関係は認められなかった。3)他コロニーから侵入した個体を識別する能力は、幼虫の世話や巣内巣造りをしている内役個体(一般に若い成虫)よりも餌集めや巣の防衛にたずさわる外役個体の方がすぐれている。ただし、この違いが〓にもとづくのか分業にもとづくのかは判別できなかった。4)同じコロニーを構成する個体間でフルシブ認識が可能であるかどうかは確認できなかった。ただし、これは、個体間の栄養交換頻度と血縁度とを対応させた上で結論づける必要がある。 そこで個体間の血縁度を測定する方法を開発するため、カドフシアリを使って、PCR法において個体間変異の現われるプライマーの開発と取り組んだ。尚これに要する機器類は北大染色体研究施設のものを使用した。その結果、LXGT115とLXGT218で個体間変異を確認できたが、個体間の血縁度を測定するにはさらに使用可能なプライマーを少なくともあと3つ程度開発する必要があり、現在実験を継続中である。
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