研究概要 |
北海道のオシダ属10種の成熟胞子葉の形状は、同所性(共存率)が高いほど差異が大きな傾向を示した。とりわけ林床に生活空間をもつシダで、その傾向が高い。葉の組織の総タンパクの比較では、同所性であり自然雑種を形成する種同志での相同性が高いことが示された。同所性で自然雑種をつくる、タニヘゴ・ミヤマベニシダや北アメリカのD.cristata・D.goldianaでは共に形状(群葉・葉)が顕著に異なる。このことは、おそらく群葉・葉形構造として表現される形質は光条件など生態的要因が導いた収れんと考えられる。また自然雑種形成など、細胞レベル・遺伝子交流の度合は同所性のほうが機会にめぐまれることとタンパク組成などまでには反映されている結果とみなしやすい。 組織レベル(脈密度)での比較でも、やはり同所性のほうが似た値を示し、水分環境との対応が比較的ミクロサイトの環境圧に対応していることが示されつつある。 日本・北アメリカの移植個体の葉の追跡からは、開葉様式の差異が示され、細長い葉では伸長が早くひきつづき葉幅拡大が促され、円から五角形に近い葉では伸長と幅拡大がほぼ同時におこることが示された。 群葉全体としては、細長い葉をもつ種は株立ちの一斉開葉に類型され、幅広の葉をもつ種群は根茎がのび、順次開葉の様式を示す。 5年度は、移植栽培の継続観察(開葉様式)と、北海道における共存域と非共存域での個体群調査を行う予定である。 シダフロラの定量比較データからも、500m距離がある場合よりも数十Kmでも生育場所の類似した組合わせのほうがフロラ類似性が高く,同所・異所性にもスケールを考慮して再検討を要すと思われる。
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