我々は、動物界全体に適用できるように大変シンプルな仮定をおいて子育ての問題を数理的に考察した。ある動物の個体群の片方の性において、保護をする個体数はもちろんのこと、交尾相手がどちらの戦略を採っているかまでを考慮した新しい子育ての数理モデルを作った。これまでの数理モデルにおいては、交尾相手がどちらの戦略を採っているかが考慮されていなかったので、次の交尾相手の獲得時間に問題があった。モデルの結果は、両親保護と片親保護の下で育てることができる子供の数の比、片親保護と無保護の子供の数の比、それと性比を変数として、3次元空間に両親保護、メス保護、オス保護、と無保護が進化的に安定な状態となる領域に表した。進化的に安定な状態は必ずしも一つではなく、オス保護とメス保護が重なったり、両親保護と無保護が重なったりする場合もある。どちらになるかは過去からの進化の歴史が決める(三つの変数のうちどれが変化したか)。またどの保護形式も進化的に安定な状態ではない(純粋戦略が進化的に安定な戦略になれない)混合戦略の領域(一方もしくは両方の性において保護と無保護がまざっている)も見いだした。しかしながら四つの保護形式のうち、どの保護形式を採るかは主として性比に依存することが分かった。魚においてはやるとすればオス保護であるが、父性の確かさが主要な要因であることも示された。これらの結果は"Parental Care as a Game"と題してJournal of Evolutionary Biologyに受理された。
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