平成四年度では4つの保護形式、両親保護、オス保護、メス保護と無保護のいづれが純粋戦略になるかを、性比、両親保護と片親保護の場合の子供の数の比、片親保護と無保護の場合の子供の数の比の3つのパラメータで記述した。ところが進化的に安定な状態は必ずしも一つではない場合があることがわかった。オス保護とメス保護が重なったり、両親保護と無保護が重なったりする場合がある。どちらになるかは過去からの進化の歴史(3つのうちのどのパラメータが変化したか)。また、ある特定の保護形式から出発して、3つのパラメータの一つを変化させていくと、どの保護形式も進化的に安定な状態にならない場合(一方、あるいは両方の性で保護と無保護が混ざっている)を経て別の特定の保護形式になることがあることもわかった。本年度は保護形式の多型に論点を移した。同一種内に複数の保育パターンが存在するもの(例えば地中海のクジャクベラ)、あるいは近縁種のグループ内に多種な保育パターンが存在するもの(例えば、一夫多妻の鳥、カエル類)等の実際の生物と、我々のモデルとの比較対応を行った。各分類の専門の生態学者からの情報をもとにして、モデルの予測と、その実際の保護形式を比較検討中である。また我々のモデルにおいては、実効性比が一番重要であったが、はたして性比が本当に一番影響が大きいのかを実際の生物で検討中である。また、保育行動の進化の統一的理論として遺伝的、生態的な総合的考察を行っている。
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