研究概要 |
送粉昆虫を介した花筒長への選択圧を雌性の繁殖成功度によって測定した。その結果,選択は花筒長が長くなる方へ向いていることがわかった。送粉昆虫の有効な口吻長(中舌長,基節)と花筒長とのサイズの一致が長い花筒長の高い結実率を決める重要な要因となっていた。トラマルハナバチ(Bombus diversus)あるいは稀にナガマルハナバチ(B.consobrinus)が長い花筒長の花を送粉するが,その花筒長はハチの中舌の長さと一致していた。またミヤマハナバチ(B.honshuensis)も長い花筒長を持つ花の送粉昆虫であるが,その訪花した花の花筒長はハチの中舌長+基節の長さと対応していた。花筒長が短い花においてもミヤマハナバチが送粉しているが,中舌だけを伸張して吸蜜し,それぞれ長さの対応がある。長花筒の花は3種のマルハナバチによって送粉されるが,短花筒の花はそのうちの1種によってのみ送粉されていた。 中間移行型を含む集団を5つ選び,酵素多型変異解析によって集団間の遺伝的距離を計算した。結果は集団間の遺伝的分化は非常に少なく,活発に遺伝的交流が行われている可能性が示された。
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