さまざまな土地利用からなる地域全体のメタン収支を求めるため、そこでの発生源であるヨシ湿地からのメタン発生速度と、吸収源である森林のメタン吸収速度を測定した。 ヨシ湿地からのメタン発生速度には季節変動が認められた。7月に平均17.72mgCH4/m2/hrのメタン発生速度を記録して最高値を示し、12月に0.35mgCH4/m2/hrで最低となった。このように、ヨシ湿地からのメタン発生速度は温度の影響を受けているが、それだけでなく、重要な要因として、水位や土壌の酸化還元電位もあげられることが明らかになった。また、ヨシ湿地からのメタン発生に果たすヨシの役割について調べたところ、ヨシはメタン発生に対して促進的な効果を持っていることが示唆された。 森林土壌のメタン吸収速度にも季節変動が認められ、そのピークは10月頃にみられた。また、その温度依存性について実験したところ、25〜30℃でメタン吸収速度が最高となる傾向がどの時期の土壌においても認められた。土壌の深さによりメタン吸収速度がどうかわるかを調べた結果、森林土壌のメタン吸収はおもに表層部、地表面から20cmくらいまでのところでなされていることが明らかになった。さらに、採取した土壌をオートクレーブにより殺菌したところ、前にメタン吸収を示していた土壌が、殺菌後には吸収しなくなり、このことから森林土壌によるメタン吸収は生物的作用によることが示された。
|