研究概要 |
今年度はおもにクモ各種の網と人口網にかかった餌を採集し,その組成とサイズ構成を調べた。草地や林で垂直円網を張る種(コガネグモ,チュウガタコガネグモ,ナガコガネグモ,ショロウグモ)の網には,半翅目・双翅目・膜翅目・鞘翅目の昆虫が多く,半翅目ではアブラムシ類,双翅目ではヌカカ・ユスリカなどの長角亜目,膜翅類では羽アリが多かった。林や草地に設置した人口網にかかる「餌」の組成との比較から,ジョロウグモとナガコガネグモは半翅目,膜翅目,鞘翅目を選択的に捕食しているようであった。またナガコガネグモは網にかかった餌の中からより大型で重い餌を選んで摂食することが分かった。 これに対して,おもに渓流上で水平円網を張る種(アシナガグモ,ヤサガタアシナガグモ,オオシロカネグモ,タニマノドヨウグモ)では,双翅目とカゲロウ目が餌の大部分を占め,双翅目はすべて長角亜目であった。ただし,タニマノドヨウグモではカゲロウ目が主要な餌であるのに対して,他の3種では双翅目が(少なくても数の上では)主要な餌であった。渓流上に設置された人口網には,クモの網と同様に双翅目とカゲロウ目が多かったが,膜翅目・クモ目・半翅目・鞘翅目なども数%から10数%を占めており,双翅目では短角亜目もかなりかかっているなど,クモの網とかなり異なる傾向も見られた。
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