細胞内での極性形成や細胞分裂に重要であると考えられている細胞骨格系と、細胞壁を結合細胞膜タンパク質を見い出し、その構造と機能を知ることを目的として細胞壁に結合した細胞膜タンパク質の検索を行い以下の結果を得た。 1)ニンジン培養細胞のSDSで十分に洗浄した細胞壁に対するウサギ抗血清を用いて、ニンジン細胞の膜画分に存在するタンパク質に対するイムノブロットを行ったところ、いくつかのバンドが検出された。 2)それらのうち、18KDaのタンパク質に注目して精製を行い、部分アミノ酸配列の決定と、特異抗体の作製を行ったところ、18KDaタンパク質は細胞壁のなんらかの成分に結合したものであり、細胞膜タンパク質ではないことが判明した。細胞膜の調整法として、プロトプラストを材料とし、シリカマイクロビーズ法を用いてきたが、この方法では、未消化の細胞壁成分をも膜画分として回収してしまう危険性がある。また、ベクチンゲルのような細胞壁成分はあたかも生体膜のような細胞分画上の挙動を示すことが明かとなった。 3)そこで次に、動物細胞の細胞膜タンパク質のラベルに用いられているNHS-ビオチンを用いて、植物細胞の表層ラベルを行った。植物細胞はH^+を細胞外へ放出しているので、細胞壁中のpHが低くなっている。そこで、膜の内外のH^+勾配を消す作用を有するCCCPを処理して細胞表層のpHを上昇させることにより、細胞膜タンパク質のビオチン化に成功した。 4)現在、それらのうち、目的のタンパク質の検索を行っている。
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