研究概要 |
葉緑体には固有のDNA(cpDNA)が存在し,葉緑体の分裂に伴って複製・分配される。この分配の機構の一つとして,cpDNAが膜系に結合し,葉緑体の分裂に伴ってほぼ均等に分配されることが考えられている。全てのプラスチドに普遍的に存在する膜である包膜がこの機能を担っている可能性が,分裂の盛んな若い葉の葉緑体の蛍光顕微鏡観察から得られた。本年度の研究では,エンドウの若い葉の葉緑体から包膜を単離して,サウスウェスタン法により,分子量約130kDaのDNA結合タンパク質を検出し,PENDタンパク質と名付けた。PENDタンパク質は,2重の包膜の内膜に局在し,cpDNAを特異的に結合した。幾つかのクローン化されたDNA断片を用いたマッピングと,サウスウェスタン法でフィルター上に保持されたDNA断片のPCR法による増幅などの手法を用いることにより,cpDNA上でPENDタンパク質と結合する領域は少なくとも3カ所あることがわかった。この領域のDNAをプローブとして,λgt11発現ライブラリをサウスウェスタン法でスクリーニングし,2個のDNA結合タンパク質cDNAクローンを得た。大腸菌で発現したタンパク質を抗原として抗体を調製し,イムノブロットを行ったところ,いくつかのバンドと反応した。現在,これらのcDNAがPENDタンパク質をコードしているのかどうか確認する作業を進めている。他方,PENDタンパク質結合領域のDNAをプローブとするアフィニティマトリックスを用いて,PENDタンパク質を精製する試みも行っている。
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