研究概要 |
低CO_2条件に適応した単細胞緑藻Chlorella vulgaris 211-11hの生細胞によるグリコール酸の取り込みが、キャリアータンパクによるエネルギー依存の能動輸送であることを示した。更に、その取り込まれたグリコール酸がグリコール酸経路によって代謝されることおよびその取り込みが代謝速度により律速されることが分った。そのため、単離細胞膜を用いてその膜透過機構を調べるため、まず細胞膜の単離と精製を試みた。 (1)細胞膜の単離法に関して、水性二層分配法におけるポリマー濃度を6.2%とし、ショ糖密度勾配遠心法におけるショ糖濃度を32/41%とし、細胞膜標品を得た。マーカー酵素、特異的阻害剤に対する感受性を調べ、その標品が純度の高い細胞膜であることを示した。更に、電子顕微鏡観察によりそれらの標品が単位膜構造を持つ直径0.05-0.2μmの小胞であることを確認した。 (2)本標品の細胞膜ATPase活性の特性を調べ、Km(ATP)=1.64mM,Vmax=4.31μmol Pi/mg protein/minであることを明らかにした。 (3)各種金属イオンおよびイオノフォアの影響を調べ、得られた細胞膜ATPase活性がMg^<2+>依存のH^+-ATPaseであることを示した。 (4)生細胞によるグリコール酸の取り込みを、CO_2輸送や光合成活性を阻害することなしに特異的に阻害する膜不透過性のタンパク修飾剤として、DIDS(ジイソチオシアノスティルベン)が最適であることを見出した。 今後はこの細胞膜標品を用いて^<14>Cーグリコール酸の取り込みおよびトランスポータータンパクの同定と単離を試みる。
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