本研究の平成4年度における研究計画は、(1)タバコrDNAのクローニングと(2)rRNAのin vitro転写系の確立、の二点であった。(1)に関しては、rDNAの反復単位一つ分に相当する約10.5kbのXbal断片のクローンを得た。さらに、非転写領域を含む大スペーサーの塩基配列を決定する目的で、スペーサーの全領域を内包する約5.8kbのEcoRI断片をサブクローンを行った。現在そのサブクローンをもとにして種々の欠失突然変異分子を作製し、塩基配列の決定を実施中である。まだ部分的なデータからの知見であるが、(i)高等植物のrRNA転写開始点領域に共通して見られる塩基配列が、タバコのrDNAスペーサーにも存在しており、スペーサーの中央より少し上流に位置する、(ii)タバコrDNAスペーサー内には少なくとも二種類のサブリピートが存在し、その一つは、転写開始点と予想される位置よりも上流に、もう一つは下流にある、(iii)上流側のサブリピートと転写開始点と予想される領域との間にはA/Tリッチな領域が存在する、ということが明らかになった。今後さらに塩基配列に未決定あるいは不明確な部分の解析を行いスペーサー構造の全貌を明らかにする予定である。一方(2)に関しては、タバコ培養細胞(BY2)から全細胞抽出液を調製し、in vitro転写反応を行っているが現在までのところ転写産物が検出されていない。したがって、今後、抽出液の調製方法あるいは反応の条件をさらに詳細に検討して行く予定である。
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