本研究の当初の研究計画は、(1)タバコrDNAのクローニングとスペーサー領域の塩基配列の決定、および(2)in vitro転写系の確立、の2点であった。 (1)のクローニングについては平成4年度に達成し、それをもとに2年間にわたってスペーサーの全領域の、4996bpの塩基配列を決定した。その結果以下のことが明らかになった。(I)転写開始点を含むと思われる、植物でよく保存された塩基配列(以下転写開始点と呼ぶ)がスペーサーのほぼ中央に存在する。(II)転写開始点より下流に互いにホモロジーの高い(90%以上)約120bpの配列が、14bpまたは20bpの2種類の短い配列を介在して15回繰り返されたサブリピートが存在する。(III)転写開始点のすぐ上流の約440bpにわたり非常にA-Tな領域が存在し、それが同じナス科植物のトマトあるいはジャガイモのrDNA転写開始点の上流域とホモロジーを有する。(IV)A-Tリッチ領域のさらに上流にもサブリピートが存在する。これは基本的には約220bpの配列が直列に6回繰り返されているが、その内の3つは後半の約90〜160bpが、1つは前半の約60bpが欠失した不完全な反復の形をとっている。 (2)のin vitro転写系に関しては、2年間にわたってタバコ培養細胞(BY2)の全細胞抽出液の調製方法について検討し反応に使用したが、今のところ転写活性を持ったものが得られていない。その理由として、これらの抽出液中のヌクレアーゼ活性が高いためと考えられるため、今後は核分画からのエクストラクトの調製法を検討しin vitroの反応系に導入する予定である。
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