研究概要 |
高等植物におけるガラクトリパーゼの生理的役割を明らかにするため、脂質代謝レベル、タンパク質レベル、および遺伝子レベルで研究を行い、以下の結果を得た。 1.大気汚染(オゾン)傷害の過程でガラクトリパーゼによって駆動される新規脂質代謝系が、各種高等植物葉に普遍的に作動すること、この代謝系が二酸化硫黄処理、水欠乏処理、プロトプラストの単離などのストレスによっても作動することを見出し、ガラクトリパーゼが環境ストレスに共通して機能することを示した。 2.インゲン(Phaseolus vulgaris L.)葉には、葉緑体膜結合型と可溶性の少なくとも2種類のガラクトリパーゼが存在する。葉緑体ガラクトリパーゼに対して作成した抗血清は、葉緑体膜から可溶化したタンパク質および葉の可溶性タンパク質に含まれるガラクトリパーゼ活性を完全に阻害したことから、両画分の酵素は免疫学的に類似していること、かつ免疫学的に識別されるガラクトリパーゼのイソ酵素が存在しないことが分かった。 3.インゲン品種間で、葉緑体ガラクトリパーゼ活性に3,000倍を越える差があることを見出している。葉緑体タンパク質について、デオキシコール酸を含むNative-電気泳動およびウェスタンブロットを行ったところ、単一バンドのみが検出され、かつインゲン品種間の活性差とタンパク質量の差に相関関係が見出された。可溶性ガラクトリパーゼも、ウェスタンブロットで単一バンドを示した。 4.ガラクトリパーゼタンパク質の発現量が多いインゲン品種からmRNAを単離し、cDNAライブラリーを作成して、抗血清によるガラクトリパーゼcDNAのスクリーニングを行った。いくつかの問題点を解決し、現在新たに作成したライブラリーを用いてcDNAのクローニングを急いでいる。
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