研究課題
その生活史に有性生殖世代をもたない二倍体酵母Candida albicansにおいて、高頻度変異(表現型スイッチング)と呼ばれ、遺伝子突然変異の頻度よりもはるかに高い頻度で集落形態や栄養要求変異が現れる現象と、本研究者によってはじめて発見された多倍数化細胞の出現の現象との因果関係を、本研究で世界ではじめて明らかにすることができた。これら二つの現象の因果関係を証明するために、赤褐色の色素を産生するアデニン要求性変異に注目することを考えた。アデニン要求株を分離し、それがADE2遺伝子の変異であることを細胞融合を利用した相補検定により確認した。次に、この要求株からアデニン遺伝子が異型接合(ade2/ADE2)になった株SGF7-2を自然復帰体として得た。この株では平板培地上で薄い桃色の集落を形成するほか、37℃で培養すると多倍数化細胞が現われる性質も組み換えられている。37℃の培養からは、アデニン遺伝子が同型接合状態(ade2/ade2およびADE2/ADE2、それぞれ赤褐色と白色の集落を形成する)となったものが10^<-2>という高頻度で生ずることが示された。また一つの集落にスポーク状に白と桃色、桃色と赤が多数混在した形態をとるものでは、細胞集団中に多倍数化した細胞が10〜20%も占めるようになり、その後の継代培養において様々な集落形態変異を高頻度で起こすことがわかった。またミクロマニュプレーターを使って個々の多倍数化した大型の細胞を釣りあげ、集落を形成させたところ、アデニン遺伝子の接合状態の変わった変異体が、集落形成したもののうち20〜30%を占め、個々の多倍数化細胞が変異性に富んでいることを証明できた。さらに染色体電気泳動のバンドを解析した結果、これらアデニン遺伝子の接合状態の変わった変異体では、ADE2の乗った第三染色体の長さが変わることがわかった。よって多倍数化細胞では、染色体の欠失などの再配列が起っていることも証明された。
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