研究概要 |
緑色渦鞭毛藻Lepidodinium virideの葉緑体にみられた核様体状の二重膜構造におけるDNAの存否を明らかにするために,免疫電子顕微鏡観察を行ったところ,DNAの存在を示す螢光を観察することができた。この結果により葉緑体には共生藻由来の核様体があることが明かとなった。ホストである渦鞭毛藻の鞭毛装置構造を透過型電子顕微鏡で観察したところ、渦鞭毛藻共通の横条紋根(TSR)及び縦微小管根(LMR)が認められた。さらに、両鞭毛基部は120゚〜130゚の角度でずれているが、この特徴はギムノジニウム科によくみられる特徴である。また本種には他の渦鞭毛藻にはみられない横鞭毛基部背側を走る湾曲した微小管根(CMR)、縦条紋根(LSR)が存在していた。CMRの湾曲部先端はTSRの基部と連結しており、さらに電子密度の高い物質でLMRと縦鞭毛基部に連結していた。LSRは縦鞭毛基部の背側基部より発出し、LMRの腹側右端にそって走っていた。なお、LMRが鞭毛基部で90゚曲がっていること、細胞膜下にありペダンクル様細胞質突起にむかって走る微小管束とLMRを連結する微小管の存在が明かとなったが、これらの特徴も他の渦鞭毛藻にはみられないものである。以上のことから、Lepidodiniumを新属としたことの妥当性が鞭毛装置構造からも明かとなった。本種の葉緑体の系統を分子レベルで解析する基礎を構築するため、本種の葉緑体の起源と考えられる緑藻Chlamydomonas parkeae及びプラシノ藻Pyraminonas parkeaeの葉緑体ssu rRNA遺伝子をPCRで増幅し、各々の塩基配列を比較した。この結果、ChlamydomonasとPyramimonasは互いに全く離れたグループに位置した。このことによりLepidodiniumの葉緑体ssu rRNAの塩基配列がわかれば、どのグループに所属するかすぐ判明できるようになった。
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