研究概要 |
今年度はとくに資料収集に努め,南西諸島,東北地方北部などからトチカガミ科Enhalus(ウミショウブ),ホロムイソウ科Scheuchzeria(ホロムイソウ),シバナ科Triglochin(シバナ,ホソバノシバナ),ヒルムシロ科Potamogeton(ヒルムシロほか),アマモ科Zostera(アマモほか),Phyllospadix(スガモ・エビアマモ),イバラモ科Najas(イバラモ),ホンゴウソウ科Sciaphila(ウエマツソウ)を採集し,花と果実の液浸標本を作成した。 このうち,アマモ科に関しては,日本産アマモ属すべての資料が揃い,アマモ亜属4種のすべてとコアマモ亜属1種の5種の花と種皮の形態を明らかにすることができた。とくにアマモ亜属に関しては種皮の形態,種子の全形などから,それらを1)種皮表面には軸方向に約20本の断面が台形の角張った稜があり,表面平滑なアマモ形(アマモ),2)稜は断面が半円形で,表面全体が粒状のスゲアマモ形(スゲアマモ),3)種皮表面に稜はなく,表皮細胞の接点部分が縞状に見え,表面が平滑の,タチアマモ型(タチアマモ・オオアマモ:これらはよく類似しているが,縞の数に違いがあることが示唆されている),の3グループに分けることができた。さらに,タチアマモ型はコアマモ亜属のコアマモと類似していることがわかった。また,花に関しては,維管束走向の上では顕著な違いが見られなかったが,花序のサイズや形に種間の違いが見られただけでなく,アマモの場合には集団間の違いも明らかになった。 このほかの試料でも,各種の花の維管束走向と種皮の形態を観察し解折中であるが,比較研究してその成果を公表するには至っていない。
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